クリニックのホームページ監視が開始・狙われる診療科は?

 

クリニックのホームページ監視が開始・狙われる診療科は?

この記事の要点

  • ・2017年8月24日から医療機関ホームページの監視パトロールが開始される
  • ・狙われる診療科は美容医療などの自由診療
  • ・2017年6月14日に改正された医療法(施行は同日から1年以内)によってホームページも広義の広告となり違反すると罰則等を課されるようになる

1. 医療機関ホームページ監視の概要

厚生労働省は2017年8月24日、病院やクリニック、歯科医院など医療機関のホームページ(HP)における虚偽や誇大広告の監視パトロールを開始したと発表しました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/

厚生労働省は5年前の2012年に「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」を制作・公開していました。これは、特に美容医療などのクリニックや病院のホームページ内容と実際の治療内容・料金などが異なることによるトラブルを踏まえて制作されたものです。

このガイドライン公開時は、関係する医療機関に自主的な取り組みを促すだけのものでした。今回、クリニック・病院ホームページの能動的な監視パトロールおよび一般からの情報受付を開始しました。

2. 厚生労働省の本気度は?

2.1 今年度の予算

2017年度は4,154万円の予算がついており、監視パトロール自体は民間の受託事業者が行うようです。この予算額だと数名のスタッフが専属で監視する規模ではないかと推測できます。良心的に考えると。。なお2018年度の概算要求額は、ホームページも法規制の対象となることを踏まえて(詳細は後述)ほぼ倍増の8,200万円となっています [厚労省HPより(PDFファイル)]

2.2 厚労省は内閣府からお叱りを受けています

美容医療での消費者トラブルは内閣府の案件となっています。内閣府の消費者委員会は2011年12月21日に「エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての建議」を出し、厚労省に取り締まり強化を指示しました。

それを受けて厚労省は2012年9月に医療機関ホームページガイドラインを制作しました。しかし、美容医療サービスの相談件数はその後も増えており(全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)より)、以下のように内閣府は厚労省の対策が不十分だと言及しています。

厚生労働省は、平成24年9月、(中略)「医療機関ホームページガイドライン」(中略)を策定した。(中略)こうした対策が講じられてからも、(中略)美容医療サービスに関する身体被害を含む消費者トラブルは発生し続けており、(中略)厚生労働省が講じた対策では効果が十分とは言い難い状況にある。

「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」より引用
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2015/0707_kengi.html

美容医療サービスについては、医療機関のホームページにおいて、次のように問題のある表示が行われている事例があり、相変わらず改善されていない。(中略、注:具体的な事例を紹介)これらの事例は、医療機関ホームページガイドラインにおいて掲載すべきでないとされているものであり、ガイドラインが機能していないことを示すものである。

「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」より引用
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2015/0707_kengi.html

内閣府の任務は、省をまたぐ政策や重要政策を遂行していますが、美容医療での消費者トラブルは内容的に後者、つまり重要政策と捉えられているかと思われます。通常の消費者トラブルとは異なり、医療行為は人の生命・身体にかかわるサービスであり、トラブルとなった際の被害が他の分野に比べ大きいことから内閣府の案件なのでしょう。今回のホームページ監視パトロールはこのような経緯で開始しました。

2.3 具体的な監視パトロール内容

美容外科のホームページ内容をいくつか見てみると、上記の医療機関ホームページガイドラインに違反しているクリニックなどが簡単にたくさん見つかります。ホームページを監視する業者は、違反が見つかるとそのクリニック・広告会社・プロバイダにガイドラインの周知と自主的な見直しを促します。それでも改善がみられない場合は関係自治体に報告し、その自治体から指導が行われます。

今回の監視パトロールでは電話あるいは専用サイトから違反するクリニック・病院ホームページ情報の受付けも行っています。これを舐めてはいけません。世の中には正義感に溢れた方々が一定数いるのです。8月24日に医療系ホームページの監視パトロール開始という告知が流れると、SNS上では多くシェアされました。また、実際にトラブルのあった患者さんからの報告もあるでしょう。

このように医療機関ホームページの監視パトロールは、内閣府から取り締まり強化を求められている案件であり、予算を確保して民間業者によって実施されることから、厚労省は重要な施策として位置付けていると思われます。

3. 狙われる診療科は?

結論から言うと美容医療系です。医療機関ホームページガイドラインの一行目に「美容医療」というワードが出ています。

本指針は、美容医療サービス等の自由診療を行う医療機関のホームページに掲載されている情報を契機として発生するトラブルに対して、(以下略)

「医療機関ホームページガイドライン」より引用
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002kr43.html

ホームページの監視を委託された業者は、ガイドラインの趣旨にのっとり美容医療系のクリニックを重点的に監視パトロールすると考えられます。

美容整形外科・美容皮膚科以外には、レーシックを行う眼科、審美歯科医院・矯正歯科医院などの自由診療を行い、トラブルが既に報告されているクリニックも重点的に監視されるかと思われます。

4. 具体的に何がダメなの?

4.1 ホームページに掲載してはいけない事項

虚偽記載や客観的事実を証明できないもの 【掲載不可の例】
「絶対安全」
「必ず成功します」
「(データの根拠を示さずに)○○%の満足度」
事実であっても自らの優位性を示すもの 【掲載不可の例】
「○○治療数が県内一」
「医師数が○○市で最多」
「著名人○○が推薦しています」
「芸能人○○が受診しています」
誇大・都合のいい情報の過度な強調 【具体例】
意図的に古い情報の掲載
活動実態のない団体による
「○○学会認定医」
「○○協会認定施設」
都合のいい感想等のみを掲載
治療とは直接関係ない事項での誘引
「今なら無料で○○をプレゼント」
早急な受診をあおる表現・費用 【掲載不可の例】
「キャンペーン実施中」
「期間限定で○○」
「○○治療し放題プラン」
10,000円 5,000円」
科学的根拠が乏しいにもかかわらず患者の不安をあおって不当に誘導すること  【掲載不可の例】
「○○の症状がある人は○○のリスクがあります」
「○○手術は効果が高くお勧めです」
「○○手術は効果が低く、最新の○○手術がお勧めです」
公序良俗に反するもの 公序良俗に反する画像・映像・表現は掲載できません
右に挙げる法令で禁止されているもの 薬事法
健康増進法
不当景品類及び不当表示防止法
不正競争防止法

4.2 ホームページに掲載すべき事項(自由診療のみ)

平均的な治療内容等を分かりやすく示す 【掲載すべき事項】
通常の治療内容
平均的な費用
平均的な治療期間
平均的な治療回数
※最低限の治療内容・費用・期間・回数のみを紹介することはできません
※これらの情報を利点や長所に比べて極端に小さな文字で示すことはできません
治療のリスクや副作用について分かりやすく示す 【掲載すべき事項】
リスク
副作用
※利点のみを強調することはできません

5. 違反すると行政処分や罰則はあるのか?

5.1 現在(2017.08.24時点)は罰則等がありません

今回の監視パトロールにより、「医療機関ホームページガイドライン」に違反した場合は行政から指導を受ける可能性はありますが、現状では強制力がありません。ただし、医療法・医療法施行令・医療法施行規則・薬事法などに違反している場合はその限りではありません。

少しややこしいのですが、「医療機関ホームページガイドライン」と似たものに「医療広告ガイドライン」というものがあります。この2つは内容がとても似ているのですが、以下のように強制力の有無が異なります。

医療機関ホームページガイドライン: 強制力なし(2017年8月24日現在)

(中略)引き続き、原則としてホームページを法の規制対象と見なさないこととする(以下略)

厚生労働省ホームページより引用
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002kr43.html

医療広告ガイドライン: 違反者に対して中止・是正命令、告発、行政処分を行うことが可能

なお、罰則については、①の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療科名を広告する際に、併せて許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)又は④の中止命令若しくは是正命令に従わなかった場合には、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金(法第73条第1号)、②の報告命令又は③の立入検査に対する違反の場合には、20万円以下の罰金(法第74条第2号)が適用される。

病院又は診療所の開設の許可の取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ずることが可能であるので、行政処分の実施を考慮すべきである。

医療広告ガイドライン(p42)より引用【PDFファイル】
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/shishin.pdf

現状ではクリニックや病院、歯科医院など医療機関のホームページは法律上の広告とみなされいません(2017年8月24日現在)。例外として、リスティング広告やバナー広告およびそのリンク先ページは広告とみなされます。

5.2 遅くとも2018年6月14日以降は罰則等を受けます

内閣府は医療機関ホームページも以下の通り広告として扱うよう厚労省に建議しており、ホームページも法的拘束力のある広告に含めるよう求めていました。

医療機関のホームページの情報提供の適正化
(i)医療法の規定に基づき規制の対象とされている「広告」の概念を拡張し、医療機関のホームページも「広告」に含めること。

「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」より引用
http://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2015/0707_kengi.html

これを受けて2017年1月18日、医療機関ホームページにも是正命令や罰則を科すことができる、第8次医療法改正案がまとめられた。そして同6月14日、「医療法等の一部を改正する法律」(リンク先はPDFファイル)が交付されました。

この改正法がとても分かりにくいのですが、厚生労働省に直接問い合わせましたので詳しく説明します。

今回の改正法でホームページ規制に関する箇所は、上記リンクPDFの2~3ページ目の「(3)医療に関する広告規制の見直し」に関する事項の部分です。実はここにホームページやwebサイトなどの文言が出てきません。

ア 何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならないものとすること。(第6条の5第1項関係)

「医療法等の一部を改正する法律」第2 (3)より引用(PDFファイル)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000171625.pdf

読んでも意味不明でしたので、厚労省に電話で聞いてみました。上記の引用文に広告という単語が2回出てきますが、1つ目の広告は医療広告ガイドラインで示した従来の意味の(狭義の)広告、2つ目の「」内の広告はホームページを含む広義の広告だそうです。分かりづらいですね・・

つまり、「その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」がホームページを指しているとのことです。弁護士の先生もブログで同様の解説をしています

今回の改正法によりホームページも事実上は広義の広告とし、以下の通り規定して是正命令や罰則を科すことができるようにしました。

①他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。②誇大な広告をしないこと。③公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。

「医療法等の一部を改正する法律」第2 (3)より引用(PDFファイル)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000171625.pdf

ただし、ホームページは狭義の広告とは異なり、「医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合」は表現の自由度を高めましょうということになりました。

具体的にホームページではどのような表現がOKなのかも厚労省に聞いてみたところ、今後、医療関係者や消費者代表者などを含む検討会で議論し、ガイドライン等を制作して示すそうです。

本改正法の施行は、同法交付から1年を超えない範囲と定められているので、遅くとも2018年6月14日までには施行されます。厚労省の方の話ではそれまでにガイドライン等を作成するそうです。

6. まとめ

これまで、特に自由診療系のクリニックなどではガイドラインが守られておらず、正直者が馬鹿を見るという状態でした。今回、監視パトロールがスタートしましたが、自治体によるホームページ改善の指導対象者は医療機関だけでなく我々のようなホームページ制作会社なども含まれています。1年以内にはホームページも法規制を受けるようになります。やるからには徹底的に監視・指導が行われ、フェアな環境で各医療機関の運営ができることを望んでいます。

7. 2017.11.15 追記 医療系口コミ・ランキングサイトも規制の対象に

2017年11月14日に行われた加藤勝信厚労大臣の会見において、医療系口コミ・ランキングサイトに関するコメントがありました。

例えば、医療機関が広告料の費用を負担する等の便宜を図って働きかけをした上で、口コミやランキング等の医療情報サイトに掲載を依頼することによって患者を誘引する場合には、医療法上の広告に該当するというお話をさせていただいたところです。

他方で、それとは無関係に投稿される、一般の方が発信することについては、医療を受ける者を誘引するための手段ではありませんから、規制の対象にはならないという整理をしております。

この口コミ・ランキング等の医療系情報サイトについても、改正法が施行されるまでにガイドラインが示されるものと思われます。