2022年|入門 - 医療広告ガイドラインの全体像を解説

2022年|入門 - 医療広告ガイドラインの全体像を解説

2024.04.03 2024年3月に改定されたの医療広告ガイドライン、Q&A、ウェブサイト等の事例解説書(第4版)の内容を反映させました。
2022.03.14 内容を大幅に更新しました。

医療広告規制は2018年の大幅改正によって限定解除という新たなルールが追加され、規制の構造が複雑になってしまいました。そこで本記事は次のような方を想定して分かりやすく解説していきます。

このような方にオススメ
  • 全く分からないので1から医療広告規制を知りたい
  • 医療広告規制の全体像を把握したい
  • 限定解除のルールを理解したい

本記事のまとめ

医療広告ガイドラインやQ&AにはNG表現などの具体例がたくさん紹介されているので、実務ではそれらを読むだけで解決できることも多々あります。しかし、規制の全体像を把握していなければ応用が利かなかったり解釈を誤ってしまう可能性があります。

医療広告規制の全体像を把握することにより、次のようなステップで医療広告を体系的に制作、チェックできるようになります。

STEP
医療広告の規制対象か判定する

医療広告の規制対象となる業種は医業、歯科医業、助産師業のみです。これらについて①誘引性と②特定性があれば規制対象になります。

医療広告の規制対象かどうかを判定するフローチャート
STEP
限定解除が可能なタイプの広告か判定し、可能な広告であれば限定解除を行う

医療広告は次の2種類に分けることができます。

  1. 患者が受動的に見聞きする広告(チラシ、屋外看板、CMなど)
  2. 患者が能動的に入手する広告(ウェブサイトなど)

2は限定解除という要件を満たすことで1よりも広告できる内容の範囲が広がります。従って2のタイプの広告であれば、フローチャートに従って追記事項を記載することにより限定解除を行います。

医療広告の限定解除が可能かを判定するフローチャート
STEP
広告禁止事項に該当しないかチェックする

医療広告規制に違反している場合は、必ず広告禁止事項のいずれかに該当します(麻酔科の広告を除く)。これら禁止事項を1つずつ確認することで漏れなくチェックすることができます。

原則:広告禁止事項の8項目を全て遵守する必要があります。従って、広告可能事項の15項目以外は広告できません(下図の左)。

限定解除要件を満たした場合:限定解除要件を満たしたウェブサイトなどでは、広告可能事項以外も広告できるようになります(下図の右)。

医療広告規制の全体像

医療広告規制とは

医療広告規制とは医療機関の広告に関する規制であり、主に以下の法令や通知などから構成されています。医療広告ガイドラインは医療広告規制という意味で使われるケースもみられますが、正確には医療広告規制を構成する行政文書の1つです。

  1. 医療法(法律)pdfスマホ対応
  2. 医療法施行令(政令)pdfスマホ対応
  3. 医療法施行規則(省令)pdfスマホ対応
  4. 厚生労働省告示(告示)pdf
  5. 医療広告ガイドライン pdfスマホ対応
  6. Q&A pdfスマホ対応&補足解説
  7. ウェブサイトの事例解説書 pdfスマホ対応&補足解説

医療広告ガイドライン

医療広告ガイドラインは、医療法をはじめとする法令や告示などに書かれている医療広告に関する規制内容を具体的にまとめた解説書です。正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」といいます。広告を作成する実務担当者が参考にする中心的な一次情報です。

医療広告ガイドラインは、ウェブサイトを例外的な扱いとして解説しているので注意が必要です。

Q&A

Q&Aは医療広告ガイドラインの補足的な位置づけですが、未承認医薬品等の治療の広告ルールなどQ&Aにしか示されていない内容もあります。

Q&Aも医療広告ガイドラインと同じく、ウェブサイトを例外的な扱いとして解説しているので注意が必要です。

ウェブサイトの事例解説書

ウェブサイトの事例解説書は、医療広告ガイドラインやQ&Aとは異なり、新たな解釈を示さないという方針のもと作られています。また、医療機関のネットパトロール事業において違反の多い事例や、周知が必要と考えられた事例が取り扱われています。

ウェブサイトの事例解説書は、その名の通りウェブサイトの広告を前提に解説されており、その点が医療広告ガイドラインやQ&Aとは異なります。

ポイント
  • 広告を作成する実務担当者が参考にすべき一次情報は、医療広告ガイドライン・Q&A・ウェブサイトの事例解説書の3つ
  • 医療広告ガイドラインとQ&Aはウェブサイトを例外的な扱いとして解説しているので注意が必要
医療広告規制の主な改正履歴
2018.06.01
医療広告ガイドライン 改正

ウェブサイトが医療広告規制の対象に追加されました。これに伴い医療機関ホームページガイドラインは廃止されました。

2018.08.10
Q&A 改正

2018年の医療広告ガイドライン改正に伴い、Q&Aが大幅改正されました。

2018.10.24
Q&A 追加

Q&A 1-18が追加されました。

2021.04.01
医療広告ガイドライン 一部改正

看護師が特定行為を実施している旨などが広告可能事項に追加されました。

2021.07.26
ウェブサイトの事例解説書 公開

医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書が公開されました。

2021.10.01
告示 改正

日本専門医機構、および日本歯科専門医機構が認定する専門医の一部が広告可能事項に追加されました。

2022.04.01
医療広告ガイドラインとQ&A 一部改正

告示などで改正されていた内容がガイドラインとQ&Aにも反映されました。

2022.12.28
医療広告ガイドライン 一部改正

都道府県等から厚生労働省への照会方法がFAXからEメールに変更されました。

2023.02.01
ウェブサイトの事例解説書 第2版 公開

事例が7項目追加されました。

2023.10.06
ウェブサイトの事例解説書 第3版 公開

事例が8項目追加されました。

2023.10.12
医療広告ガイドラインとQ&A 一部改正

日本歯科専門医機構が認定する補綴歯科専門医が広告可能事項に追加されました。

2024.03.22
医療広告ガイドラインとQ&A 一部改訂

未承認医薬品等を用いた自由診療を広告する要件が追加されました。

2024.03.28
ウェブサイト等の事例解説書 第4版 公開

新たにSNSと動画の事例が追加されました。

医療広告の定義

規制の対象業種

医療広告規制の対象は、医業・歯科医業・助産師業の3業種のみです。

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師や柔道整復師の業務は規制対象外です。また、医薬品や医療機器、あるいはサプリなどの販売業も基本的には規制対象外です。ただし、医療機関に患者の受診を誘引する意図を持って医薬品や医療機器などを広告する場合は、規制対象となる可能性があります。

医療広告の規制対象は次の3業種
  • 医業
  • 歯科医業
  • 助産師業

規制対象となる要件

医業・歯科医業・助産師業について、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)、②医療機関が特定可能であること(特定性)、これら2要件をいずれも満たした場合、医療広告の規制対象となります。

医療広告の規制対象かどうかを判定するフローチャート

規制対象となる広告媒体の具体例としては、チラシ、パンフレット、ポスター、看板、新聞、雑誌、Eメール、ウェブサイト、ビデオなどが医療広告ガイドラインに挙げられています。

一方、通常、医療広告とは見なさないものの具体例としては、学術論文、新聞や雑誌の記事、患者が医療機関からの依頼なく自主的に投稿するSNS等の体験談、院内掲示、職員募集の広告などが挙げられています。院内掲示は対象者が既に受診している患者に限られるため、①の誘引性を満たさないという理由から規制の対象外です。

ただし、規制対象かどうかは媒体の種類ではなく、あくまでも①の誘引性と②の特定性を満たすかどうかで判断されます。例えば、通常は規制対象外である新聞や雑誌の記事は、患者を誘引する目的の記事風広告であれば①誘引性と②特定性を満たし、規制対象となります。

医療広告の規制対象となる2要件
  1. 誘引性(患者を誘引する意図があること)
  2. 特定性(医療機関が特定可能であること)

2018年からウェブサイトも医療広告の規制対象に

従来、クリニックや病院のウェブサイトは医療広告の規制対象ではなく、強制力のないガイドラインのもと自主的な取り組みを促していました。しかし、 平成30年(2018年)6月の医療法改正に伴い、医療機関のウェブサイトも法規制の対象になりました。

規制の内容

本章で解説する広告禁止事項・広告可能事項・限定解除、これら3つの関係性について理解できれば、医療広告規制の全体像を把握できるようになります。

広告禁止事項の8項目

次に挙げる広告禁止事項の8項目は、医療広告規制の骨格となります。更にこの中の 5. 広告可能事項以外の広告 は、医療広告規制の全体像を把握する上で最も重要な禁止項目です。

広告禁止事項

  1. 虚偽広告
  2. 比較優良広告
  3. 誇大広告
  4. 公序良俗に反する広告
  5. 広告可能事項以外の広告
  6. 治療内容や効果の体験談
  7. 誤認を与える術前術後写真
  8. その他

医療広告規制に違反している場合、必ずこれら8項目のいずれかに該当します(麻酔科の広告を除く、麻酔科を広告する方法はQ&A 3-3をご参照ください)。

1. 虚偽広告

虚偽の内容の広告は禁止されています。例えば医療の効果を100%保証する旨、加工・修正した術前術後写真の掲載、データの根拠を示さない満足度調査の結果などが挙げられます。

NG表現の具体例

  • 絶対安全な手術です!
  • どんなに難しい症例でも必ず成功します
  • 厚生労働省の認可した○○専門医
  • 加工・修正した術前術後の写真等の掲載
  • 一日で全ての治療が終了します(治療後の定期的な処置等が必要な場合)
  • ○%の満足度(根拠・調査方法の提示がないもの)
  • 当院は、○○研究所を併設しています(研究の実態がないもの)

医療広告ガイドライン 第3-1-(1) より

2. 比較優良広告

他院と比較して自院が優良である旨の広告は、例え事実であっても禁止されています。また、著名人からの推薦や、著名人が患者である旨も比較優良広告として取り扱われます。

NG表現の具体例

  • 肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。
  • 当院は県内一の医師数を誇ります。
  • 本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。
  • 芸能プロダクションと提携しています
  • 著名人も○○医師を推薦しています
  • 著名人も当院で治療を受けております。

医療広告ガイドライン 第3-1-(2) より

3. 誇大広告

患者等に誤認を与えるおそれがある広告は禁止されています。これは誤認を証明したり、実際に誤認したという結果は必要とされていません。

NG表現の具体例

  • 知事の許可を取得した病院です!(許可を強調表示する事例)
  • 医師数○名(○年○月現在)(その後の状況の変化により、医師数が大きく減少した場合)
  • 顔面の○○術1カ所○○円(価格の適用要件が小さい注釈で示されている場合)
  • ○○学会認定医(活動実態のない団体による認定)
  • ○○協会認定施設(活動実態のない団体による認定)
  • ○○センター(広告が認められたもの以外)
  • 手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの
  • 比較的安全な手術です。(何と比較して安全であるか不明な場合)
  • 伝聞や科学的根拠に乏しい情報の引用
  • ○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります(科学的な根拠が乏しい情報の場合)
  • こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください(科学的な根拠が乏しい情報の場合)
  • ○○手術は効果が高く、おすすめです。(科学的な根拠が乏しい情報の場合)
  • ○○手術は効果が乏しく、リスクも高いので、新たに開発された○○手術をおすすめします(科学的な根拠が乏しい情報の場合)

医療広告ガイドライン 第3-1-(3) より

4. 公序良俗に反する広告

わいせつ、残虐または差別を助長するような公序良俗に反する内容の広告は禁止されています。

5. 広告可能事項以外の広告

広告可能事項以外の広告は、医療広告規制の全体像を把握する上で最も重要な禁止事項です。

広告可能事項とは次節で解説する通り医師名や診療科名など15項目あり、原則として広告可能事項以外の広告は禁止されています。ただし、限定解除という要件を満たしたウェブサイトなどでは、これら15項目以外も広告できるようになります。

NG表現の具体例

  • 専門外来
  • 死亡率、術後生存率等
  • 未承認医薬品による治療の内容

※これらNG表現は限定解除要件を満たすことで広告できる場合があります

医療広告ガイドライン 第3-1-(5) より

6. 治療内容や効果の体験談

治療の内容または効果に関する患者の体験談を医療機関が紹介することは禁止されています。

ただし、治療の内容または効果以外の体験談は禁止されていません。例えば「駅から近かった」「院内がオシャレだった」などの体験談は掲載できます。その場合であっても、医療機関に都合のいい体験談のみを掲載した場合には虚偽広告や誇大広告に該当する可能性があります。

なお、医療機関からの依頼などを受けず患者が自主的にSNSや口コミサイトなどに掲載する体験談は、誘引性(医療機関が患者の受診を誘引する意図があること)がないため医療広告規制の対象外です。

7. 誤認を与える術前術後写真

原則として、術前術後写真(いわゆるビフォーアフター写真)は治療効果に該当し、広告可能事項ではないため広告が禁止されています(広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告 に該当するため広告できない)。写真だけでなくイラストも同様です。

ただし、限定解除要件を満たしたウェブサイトなどでは治療効果に関して広告できるようになります。ビフォーアフター写真を広告する場合は、更に症例1つ1つに以下の追記事項を分かりやすく記載することが必要です。

  • 治療内容
  • 治療期間と回数
  • 費用
  • リスクと副作用

これら追記事項を掲載しないビフォーアフター写真は、患者に誤認を与えるおそれがあると判断されるため禁止されます。

ビフォーアフター写真について、都合よく加工・修正した場合は虚偽広告、都合よく撮影条件や被写体の状態をビフォーとアフターで変えた場合には誇大広告に該当する可能性があります。

8. その他

品位を損ねる内容の広告は、その他の禁止事項として挙げられています。これは法令ではなく医療広告ガイドライン独自の規定です。具体的には①費用を強調した広告、②提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引、③ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告、これらが禁止されています。

NG表現の具体例

①費用を強調した広告

  • 今なら○円でキャンペーン実施中!
  • ただいまキャンペーンを実施中
  • 期間限定で○○療法を 50%オフで提供しています
  • ○○100,000 円 50,000 円
  • ○○治療し放題プラン

②提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引

  • 無料相談をされた方全員に〇〇をプレゼント

医療広告ガイドライン 第3-1-(8) より

また、①医薬品医療機器等法、②健康増進法、③景表法、④不正競争防止法など他法令で禁止されている内容も広告が禁止されています。

ポイント
  • 医療広告規制に違反している場合、必ず広告禁止事項の8項目のいずれかに該当する(麻酔科の広告を除く)
  • 5. 広告可能事項以外の広告は規制の全体像を把握する上で最も重要な禁止項目である

広告可能事項の15項目

広告可能事項は以下の15項目に限定されており、原則としてこれら15項目以外の内容は広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告に該当するため、広告が禁止されています。

広告可能事項

  1. 医師または歯科医師である旨
  2. 診療科名
  3. 医療機関の名称、電話番号、住所、管理者の名前
  4. 診療日時や予約の有無
  5. 保険医療機関である旨など
  6. 医師少数区域経験認定医師である旨
  7. 地域医療連携推進法人の参加病院等である旨
  8. 医療機関の構造設備や人員配置に関する情報
  9. 医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴、専門性資格など
  10. 施設の管理または運営に関する事項
  11. 紹介可能な医療機関名や共同利用している医療機器など
  12. 医療に関する情報提供の内容、提供方法、実績など
  13. 提供される医療の内容
  14. 平均的な入院日数や外来や入院の患者数など
  15. その他厚生労働大臣が定める事項

このように広告禁止事項と広告可能事項は並列な関係ではなく、広告禁止事項が全体の骨格であり、広告可能事項は 5. 広告可能事項以外の広告という禁止事項の中に含まれる構造になっています。

広告禁止事項と広告可能事項の関係性

限定解除した場合であっても遵守すべきルール

次節で解説する通り、限定解除要件を満たせば広告可能事項の15項目以外も広告できるようになります。では、限定解除要件を満たした場合は医療広告ガイドラインの広告可能事項を読む必要がないかというと、そうではありません。その理由は、広告可能事項には限定解除要件を満たした場合であっても守るべきルールが書かれているからです。それらルールについて重要なものをピックアップして解説していきます。

- 麻酔科

麻酔科を診療科名として広告するときには、厚生労働大臣の許可を受けた医師の氏名を合わせて広告しなければいけません。併記しなかった場合は医療法第6条の6第4項に違反し、虚偽広告と同様の罰則等を受ける可能性があります。なお、麻酔科の広告ルールは広告禁止事項のいずれにも該当しない例外的な規制です。

医療広告ガイドライン 第4-4-(2)-イ より

- 医師やスタッフの人数

従業者の人数は時期によって変動することから、いつの時点での数値であるかを歴月単位で併記する必要があります。広告した時点と現在とで人数が大きく異なる場合には誇大広告に該当する可能性があります。

医療広告ガイドライン 第4-4-(8)-イ より

- 非常勤の医療従事者

非常勤の医師やスタッフは、非常勤である旨あるいは勤務する曜日等を示す必要があります。常勤であるかの誤認を与える場合には誇大広告に該当する可能性があります。

医療広告ガイドライン 第4-4-(9)-ア-② より

- 専門医等の資格

専門医等の資格は氏名、認定団体を資格名に併記する必要があります。

例:医師○○○○(○○学会認定○○専門医)

単に「○○専門医」との標記は誤認を与えるものとして誇大広告に該当します。また活動実態がない団体や、当該医療機関の関係者自身が運営している団体による認定資格も誇大広告に該当する可能性があります。専門性資格を認定するのは各関係学術団体であり厚生労働省ではないことから、「厚生労働省認定○○専門医」は虚偽広告に該当します。

医療広告ガイドライン 第4-4-(9)-イ-①-d より

- 自由診療

一部の自由診療(広告可能事項の13-ア-④)は限定解除要件を満たさなくても広告できます。その際には自由診療である旨標準的な費用を併記する必要があります。

限定解除要件を満たしたウェブサイトの場合でも、全ての自由診療に自由診療である旨標準的な費用の併記をお勧めします(標準的な費用は限定解除要件と重複)。その理由は、広告可能事項の自由診療は定義が曖昧であること、この併記義務は限定解除されたときに免除されるか不明確であること、自由診療である旨は患者が医療を選択する上で有益な情報であることからです。

以下、限定解除要件を満たしたウェブサイトでの併記義務について考察しますが、複雑なので飛ばして頂いて構いません。

限定解除とはあくまでも広告可能事項として15項目に限定されている縛りが解除される(広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告 が免除される)というルールです。従って、限定解除によって広告可能事項の中にいくつか書かれている併記義務が一律解除される訳ではありません。

併記が必要かどうかは、併記しなかった場合に広告禁止事項に該当するかで判断されます。もし自由診療である旨を併記しなかったとしても、限定解除した際にいずれの広告禁止事項にも該当しないのであれば併記する義務はなくなります。

医療広告ガイドラインやQ&Aには、自由診療である旨(と標準的な費用)を併記しなかった場合にどの禁止項目に該当するか明記されていません。もし誤認を与えると判断されれば誇大広告に該当、限定解除要件の「医療に関する適切な選択に資する情報」を満たさないと判断される場合は広告可能事項以外の広告に該当する可能性が考えられます。

このルールは理解が難しいのですが、自由診療を広告する際には限定解除するかどうかに関わらず全て自由診療である旨を記載しておけば問題ありません。

医療広告ガイドライン 第4-4-(13)-ア-④および⑤ より

ポイント
  • 広告可能事項は15項目ある
  • 広告可能事項以外の広告は原則として禁止されている(広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告に該当するため)

限定解除

医療広告は、原則として広告可能事項の15項目以外の内容を広告できません。ただし、ウェブサイトなどでは次に挙げる①〜④の限定解除要件を全て満たした場合、広告可能事項以外の内容も広告できるようになります。

  1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク副作用等に関する事項について情報を提供すること

※ ③と④は自由診療を広告する場合のみ

医療広告の限定解除が可能かを判定するフローチャート

すなわち、限定解除要件を満たすことで広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告 が免除されます。このように、原則15項目に限定されていた制限を解除できることから、限定解除といいます。なお、限定解除が不十分である場合は、5. 広告可能事項以外の広告に違反することになります。

広告禁止事項(限定解除要件を満たした場合)

  1. 虚偽広告
  2. 比較優良広告
  3. 誇大広告
  4. 公序良俗に反する広告
  5. 広告可能事項以外の広告 ←免除
  6. 治療内容や効果の体験談
  7. 誤認を与える術前術後写真
  8. その他

限定解除の要件①を満たすことができる広告媒体の例としては、医療機関のウェブサイトの他、メルマガ、患者の求めに応じて送付するパンフレットなどが挙げられます。一方、ウェブサイト上の広告であっても、バナー広告やリスティング広告は要件①を満たすことができません。また、例えば同じチラシであっても、患者の求めに応じて送付すれば要件①を満たすことができ、不特定多数にポスティングすれば要件①を満たすことができません。

限定解除要件を満たした場合、規制内容がどのように変わるか下の図にまとめました。まず原則として、広告禁止事項は8項目あります(図の左側)。医療広告規制に違反している場合は必ずこれら8項目のいずれかに該当します(麻酔科の広告を除く)。限定解除要件を満たした場合には(図の右側)、広告禁止事項の 5. 広告可能事項以外の広告が免除されます。すなわち、原則として15項目に限定されていた広告可能事項の縛りが解除されます。ただし、残る7項目の広告禁止事項は遵守する必要があります。

医療広告規制の全体像
ポイント
  • ウェブサイトのように患者が能動的に入手する広告は限定解除することが可能である
  • 限定解除要件を満たすと広告可能事項15項目以外も広告できるようになる
  • 限定解除要件を満たした場合であっても、他の広告禁止事項は遵守する必要がある

違反すると行政処分や罰則のおそれ

医療広告規制の対象者

医療法には「何人も」虚偽の広告などをしてはならないと記されています。従って、医師や歯科医師、あるいは医療機関だけでなくマスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者または一般人など、何人も医療広告規制の対象となります。

医療機関ネットパトロール

デロイトトーマツコンサルティング合同会社による委託事業

2018年6月からウェブサイトも医療広告の規制対象に含まれることを受け、前年の2017年から医療機関のウェブサイト違反を監視する医療機関ネットパトロール事業が開始されました。この事業では、厚生労働省の委託を受けた事業者であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社が能動的にパトロールするだけでなく、一般からの通報も受け付けています。

2020年度では、委託事業者から医療機関への注意喚起の通知が1,092サイト分ありました。通知が届いてから1ヶ月以内に改善・中止しない場合、委託事業者から所管自治体に情報提供されて引き継がれます。2020年度は116サイトが自治体に情報提供され、改善・中止されたのは26サイト、残る90サイトは継続対応中となっています。(第18回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 資料より(pdf)- 厚生労働省

行政処分や罰則

違反の疑いがある広告について、参考例として、各自治体は次のような手順で対応するよう医療広告ガイドラインに記されています。

ア 調査及び行政指導
イ 報告命令又は立入検査
ウ 中止命令又は是正命令
エ 告発
オ 行政処分

基本的にはア、イ、ウの順番に行政指導等が行われます。エの刑事告発を受けると、悪質な場合には6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金を適用される可能性があります。オの行政処分では、管理者変更命令や医療機関の開設許可の取り消し、または期間を定めた閉鎖などを命じられる可能性があります。(医療広告ガイドライン 第6-4より)

なお、2020年度までのネットパトロール事業経由での自治体の対応は、全てアの調査及び行政指導に留まっており、厚生労働省が把握している限りイ、ウ、エの対応を取った事例は確認されていないようです。(第18回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会 議事録より(pdf)- 厚生労働省

公表

ウの中止命令又は是正命令、エの刑事告発を実施した際には、原則として事例を公表し、患者等に注意喚起を行うこととされています。

ポイント
  • 何人も規制の対象者となる
  • 違反した場合は行政処分や刑事罰を受ける可能性がある
  • 2018年6月からウェブサイトの違反も行政処分や刑事罰を受ける対象となった

医療広告に関する相談先

医療広告に関して個別具体的な相談は、医療機関が所在する都道府県や市区町村の医事担当や保健所などが窓口となっています。

各都道府県、保健所設置市及び特別区における医療に関する広告の窓口一覧(pdf)- 厚生労働省

ラボコートでは医療広告ガイドラインに沿った原稿のチェックと修正案の提示サービスを行っています。医療機関のウェブサイトだけでなく、チラシや屋外看板、あるいは厚生労働省の委託機関であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社からの通知に対しても修正サポートしています。まずは以下のフォームよりお問い合わせください。

\A4換算 2,200円/ページ/

医療広告のチェック&修正案の提示

医療広告ガイドラインに沿った原稿のチェックと修正案の提示を行います。0-1営業日で見積額を提示します。まずは原稿をお送りください。

対象の広告

  • ウェブサイト・LP・ネット広告
  • チラシ・パンフレット・看板など
  • A4サイズ換算 1ページあたり2,200円(税込み)
  • お見積り額は0-1営業日でお出しします
  • 初回の修正案の提示は通常1-3営業日
  • チェック&修正作業自体のやり取りは3往復まで
  • 自由診療の内容について医療機関様への確認が必要な場合があります
  • デロイトトーマツ社や保健所による指摘への修正対応も可能
  • 競合など他院様の広告チェックは固くお断りさせていただきます
  • 法律相談や法律事務など弁護士法で禁止されている業務は対象外となります
  • 本サービスに起因してラボコートが損害賠償責任を負う場合、依頼者が本サービスの対価として支払った金額を上限とさせていただきます

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