Yahooニュースで興味深い記事を見つけましたのでご紹介します。ニューサウスウェールズ大学らのグループが、妊娠中にビタミンB3(ナイアシン)を摂取することによって流産や先天異常のリスクを減少させられる可能性を発表しました。
ただし、この研究は遺伝的にNicotinamide adenine dinucleotide (NAD)合成系の遺伝子に異常がある人を対象にしています。つまり異常のない人が妊娠中にビタミンB3を摂取するとどうなるかは言及していません。自己判断でサプリなどを採るのではなく、クリニックや病院など医療機関で専門家の意見を聞いてください。
【流産ビタミンB3で大幅減 研究】一般的なビタミン剤を摂取するだけで、流産や先天異常を大幅に減らせる可能性。高リスク女性を特定する測定検査法を開発し、対象女性に十分なビタミンB3摂取を確保することを目指す。 https://t.co/fKDhg9aKEf
Yahoo!ニュース 速報や地震情報も (@YahooNewsTopics) 2017年8月11日
というブログを書いていたら専門家の先生からの補足コメントがアップされていました。一般の方のコメントは9割以上が勘違いしています・・。やはり特定の栄養素を、しかも妊婦が過剰摂取することはリスクを慎重に考えるべきですね。
この記事を読んで、ビタミンB3を大量に摂取する妊婦さんがいないか心配。。。というわけでコメントしました https://t.co/rMFcPdwvFW
市川 衛 Mamoru Ichikawa (@mam1kawa) 2017年8月11日
元の論文はこちらのNEJMです [N Engl J Med. 2017 Aug 10;377(6):544-552, NAD Deficiency, Congenital Malformations, and Niacin Supplementation]。この研究者らは流産などを経験した家族の遺伝子を網羅的に調べ、さらに原因因子候補の酵素活性を測定しました。その結果、3-hydroxyanthranilic acid 3,4-dioxygenase (HAAO) と kynureninase (KYNU)という酵素の遺伝子に変異(variant)があることを見出しました。
下のツイッターから引用した図(左側)を見てください。HAAOとKYNUは、食事から接種したトリプトファンをNADに変換するのに使われる酵素です。ビタミンB3(図ではniacin)はHAAOとKYNUより下流にあるのでNAD合成を補うことができるようです。HAAOとKYNUに変異があるとin vitro での酵素活性が低く、体内のNAD濃度も低いことが分かりました。haao-null あるいはkynu-null マウスにビタミンB3を与えると先天異常が減少しました。
Original Article: NAD Deficiency, Congenital Malformations, and Niacin Supplementation https://t.co/5iSOadTch6 pic.twitter.com/Qmy5uDCfUS
NEJM (@NEJM) 2017年8月9日
ということで市川衛先生もコメントされていますが、特に妊娠中は自己判断でサプリなどを過剰摂取せず、クリニックや病院で専門家の意見を聞きましょう。