世界各国比較|医師の男女比ランキング・年代・診療科別

世界各国比較 - 医師の男女比率を調べてみました

先日はWHOと厚生労働省の統計データを用いて [ 世界各国比較|医師・看護師・歯科医師・薬剤師数ランキング ] というブログ記事を書きました。そこでは、日本の人口あたり医師数がOECD加盟国の中で少ないことをグラフで説明しました。

今回のブログでは、医師の男女比に焦点を当てて調べてみました。

OECD関連国における医師の男女比

医師の男女比 全世代

医師の男女比について、OECD関連国と日本を比較してみました。結果はグラフを見ると一目瞭然で、日本は医師女性の比率が低い(20.3%)ことが分かります。

下から6番目のオーストラリアですら女性医師は日本の約2倍となる40.0%です。アメリカはあまり女性比が高くないんですね。34.6%でした。

上位3か国はバルト三国のラトビア、エストニア、リトアニアですが、女性医師の割合が約7割と高くなっています。後述しますが(55歳以上のデータ)、この3か国は昔から女性医師の比率が高いようです。

医師の男女比(全世代、OECD)

医師の男女比 ~34歳

35歳未満でのデータを見ると、OECD関連国の大半(26/32か国)で女性医師が5割を超えていることが分かります。これらの国では女性が医師として活躍しやすい環境にあるのでしょうか。このデータから、全世代で女性比率が5割を切っていた国も、将来的には男女比が逆転すると予想されます。

日本の女性医師比率は33.5%でした。このことから、今後も日本の女性医師比率が他国より低い状況は変わらないと予想されます。

医師の男女比(~34歳、OECD)

医師の男女比 35~44歳、45~54歳

現役医師の中心的な存在となる35~54歳をみると、この世代でも男女比が半々くらいの国が多いですね。日本の女性医師比率は35~44歳で27.1%、45~54歳では17.6%でした。

医師の男女比(35~44歳、OECD)
医師の男女比(45~54歳、OECD)

医師の男女比 55~64歳、65~74歳

55歳以上になると男性医師の比率が高い国が多くみられます。日本の女性医師比率は55~64歳で11.5%、65~74歳では9.3%でした。

女性医師の比率が高くて目立っているのは、全世代でもその比率が高かったバルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアです。65~74歳ですらこれら3か国の女性医師はそれぞれ76.7%、73.8%、68.1%でした。

医師の男女比(55~64歳、OECD)
医師の男女比(65~74歳、OECD)

日本国内における男女別 医師・歯科医師・薬剤師数の推移

医師数・男女別の推移

日本における男女別の全医師数を1970年から4年おきにまとめてみました。1970年の医師数は男性が107,671人、女性が11,319人でした。それが2014年には男性が247,701人、女性が63,504人となりました。医師全体で数が3倍近く増加し、女性の比率は約2倍に増えました。

このグラフの通り2014年の女性医師比率は20.4%ですが、35歳未満では女性医師比率が33.5%であることから(先ほどのOECDのデータ)、これからも女性医師の比率が増加することが予想されます。ただし後述しますが(下の折れ線グラフ)、35歳未満の女性医師比率の伸びはここ数年止まっています。

日本の医師数・男女別の推移

歯科医師数・男女別の推移

比較のために歯科医師の推移も調べてみました。実数は医師と異なりますが、男女比率や増加傾向は医師と酷似していました。歯科医師も女性の割合が少ないですね。

日本の歯科医師数・男女別の推移

薬剤師数・男女別の推移

女性が多いイメージが強い薬剤師は1970年の段階で46.7%が女性でした。1974年には男女比率が逆転し、近年は女性が約6割となっています。

日本の薬剤師数・男女別の推移

G7における35歳未満の女性医師比率

先ほどのデータ [ 医師数・男女別の推移 ] は全世代をまとめたデータですが、将来の傾向を分かりやすくみるため、35歳未満に絞って女性医師比率の推移を調べてみました。

下の折れ線グラフの通り、1994年では(日本、イタリアは1996年、イギリスは2000年)調査した7か国すべてで女性医師は50%を下回っていましたが、2014年には日本とアメリカ以外は50%を上回っています。2014年のイタリアとフランスは2/3が女性医師でした。同年のアメリカは48.0%、日本は33.5%でした。

日本は2010年以降、33.7%、33.6%、33.5%と女性医師比率の上昇が止まっています。

35歳未満女性医師数の推移(G7での比較)

診療科別・医師の男女比

次に日本国内における診療科別の医師の男女比を調べてみました。こちらは全世代、病院・クリニック勤務を全てまとめたデータです。複数の診療科に従事している場合は、主たる診療科のみをカウントしています。各診療科の男女比(棒グラフ)と男女合計の実数(グラフ右側の数字)をまとめました。

グラフ一番下の総数(全診療科の合計)は女性が20.4%であり、これが全体の平均となります。この20.4%を基準に比較すると、女性医師の比率が相対的に多い診療科は、皮膚科・眼科・麻酔科・産婦人科系・小児科でした。一方、女性医師の比率が低い診療科は外科系でした。

診療科別医師の男女比

まとめ

近年、日本における女性医師が増えているイメージはありましたが、データを調べてみたところ確かに女性医師の絶対数・相対数ともに増加傾向にありました [ 医師数・男女別の推移 ] 。しかし、女性医師比率はOECD関連国の平均47.3%に比べ、日本は20.3%と半分以下でした [ 医師の男女比 全世代 ] 。

35歳未満に絞ると、OECD関連国の女性医師比率は平均58.9%となり、女性に多く選ばれる職種となっています [ 医師の男女比 ~34歳 ] 。しかし日本は2010年の33.7%を最後に伸び悩んでいます [ G7における35歳未満の女性医師比率 ] 。

全世代で見れば女性医師の割合はまだ増加傾向にありますが、このままの状況で推移すれば3割台に留まることが予想されます。

補足 本記事のデータソースについて

本ブログ記事の統計データは OECD.Stat  および 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況  のホームページからダウンロードし、グラフにまとめました。

OECDの統計データ(Last updated on June 30, 2017)は各国の最新年データを用いました。日本の場合は厚生労働省が、他国も公的機関がまとめたデータをOECDが採用しています。医師の統計データは"practicing physician" (外科医も含んだ現役の医師)を医師数として用いています [ OECD.Statの医師数の定義 - Wayback Machine(pdf)  ] 。

OECD.StatのPC画面

厚労省の「医師・歯科医師・薬剤師調査の概要」は2014年版の統計データを用いました。

厚労省 医師・歯科医師・薬剤師調査のホームページ画面